兄と存在しない妹、みゆとの日々を書いたり書かなかったり
 嫉妬→ゴマの方程式
2008年12月30日 (火) | 編集 |
「此度のテーマは少々難しいぞ、みゆさんや」
「どんなのなの?」
「今年一年を一文字で表せ、ということらしい。さて、みゆはどんな文字を描く?」
「うーにゅ……そだね、みゆは『妹』だね!」
「まんまやないかーい」
「うわっ、髭だ。時事ネタは風化が早いよ? だいじょぶ? ていうか、別に面白くもないし、ノリで使うにしてもどうかと思うよ」
 妹の批評が辛い。
「それで、ぼろ泣きしてるお兄ちゃんはどんな文字なのかにゃ?」
「うっうっ……兄は、ええとそうですね、今年は『動』かな」
「あっ、前の日記にも書いてたもんね。げきどーのなんたらかんたらって」
「色々ありましたので。具体的には何ら書けないですが、色々ありましたので」
「色々あったよねぇ……」
「ああ、本当に……」
 二人して遠くを見つめてみる。飽きたので近距離で妹を見る。
「にゅ? なにかにゃ、お兄ちゃん?」
「かーわいい」
「にゃんと! お兄ちゃんがみゆに劣情をもよおした! これは珍しいことだよ、姫終わりをすべきだよ! 布団、ふとんー!」
 妹が嬉々として布団の準備をしている。このままでは兄の貞操が! いや別にいいんだけど!
 ということなので、みゆにばれないようそっと逃げてみる。
「ふー、準備かんりょーだよ、お兄ちゃん! ……あり? お兄ちゃん? ……に、逃げらりらりた!」
 兄の部屋から妹の声が木霊したが、既に兄は脱出しているのでもう遅い。
「いやはや、妹の束縛から解放され心地よいなあ。YAHOO!」
 奇声をあげて道行く人々から奇異の視線を投げかけられることさえ心地よい。嘘です。顔真っ赤です。
 のんべんだらりと散歩してたら、パン屋を発見。よし、家で巣作りしてる妹に何かおみやげ買っていってやろう。……べっ、別におみやげで許してもらおうだなんて思ってないんだからねっ!
「たのもう」
「いらっしゃいませー」
 この店の娘さんだろうか、ちっこい子が店番してた。
「キミを頂きたい」
「プロポーズされましたっ! どうしましょう、想定外ですっ!」
 面白い子だった。
「嘘です。ええと、これとこれとこれをください」
「あ、はい。480円です」
 お金を渡して商品を受け取る。
「……あ、あの、私も買われるんでしょうか?」
「いくら?」
「いちおくえんです!」
「この店に火つけてやる」
「放火魔がいます! けいさつ、けいさつのひとーっ!」
 このままでは年末年始を牢の中で過ごす羽目になりそうだったので、ここでネタばらし。ネタばらし?
「冗談、冗談だ。火はつけない」
「何をつけるんですか?」
「え? えーっと、気をつける」
「分かりました! 私も気をつけます!」
「うむ?」
 小首を傾げたままパン屋を出る。よく分からんが、元気のいい娘さんがいるので100点。
 おみやげを入手したので、家に帰る。
「むすー!」
「おむすびが兄の家に!」
「違うよ、みゆだよ! お兄ちゃんに逃げられむすーっとしてたのを表してたの!」
「なるほどそうか。それはそうと、おみやげ買ってきた。食う?」
「食べない! 折角姫終わりしようと思ったのにさ、お兄ちゃん逃げるし……みゆ、がっかりだよ」
「じゃあ兄が全部食っちゃうぞ。カロリーの過剰摂取で兄が肥え太っても知らないぞ?」
「極端に太らない限り、みゆはお兄ちゃんがどうなってもへーきだよ?」
「じゃあ極端に太る。200tくらい」
「20万kg!? 怪獣でもそんなのいないよ、お兄ちゃん!」
「それが嫌なら兄と一緒にパンを食べることだな! はーっはっはっはっは!」
「……まあいいよ。高笑いの意味が分からないけど、せっかくお兄ちゃんが買ってきてくれたし、一緒に食べるよ」
「それがいい、何よりだ。あんな可愛い娘さんが店番してる店のパンだ、うまいに決まっている」
「……可愛い娘さん?」
 いかん、みゆの眉間が一寸嫌な感じに。

「お兄ちゃん、ご飯だよー」
「わーい! ……あの、みゆさん。みゆの皿には豪華なおかずが並んでいるのに、どうして兄の皿にはゴマしか乗ってないのでしょうか」
「お兄ちゃんはー、可愛い子のお店でいっぱいパン食べたからへーきだよね?」
「いや、あの、兄は別にパンを食べてきたわけではなく」
「へーきだよね?」
「……はい」
 半泣きでぺろぺろとゴマを舐める兄だった。

コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック