兄と存在しない妹、みゆとの日々を書いたり書かなかったり
 なぎ倒してえ
2008年10月16日 (木) | 編集 |
「運動会の思い出だよ、頑張れお兄ちゃん!」
「頑張った運動会の思い出であり、頑張るのは現在ではなく過去の兄なので応援は過去の兄に頼む」
「頑張れ昔のお兄ちゃん! しかしその際にも昔のみゆが応援しているので、現在のみゆは現在のお兄ちゃんを応援したい気持ちで一杯だよ!」
「じゃあ応援してもらおうか」
「さしあたって何を応援しようかにゃ?」
 妹が兄を観察します。
「……見えたッ! みゆはお兄ちゃんがタバコを吸うのを応援するよ! フレー、フレー、お・に・い・ちゃん! 吸え、息を吸え! 吐け、煙を吐け!」
 黙ってタバコの火を消す。
「ああっ、応援したのにぃ……」
「そうは思えませんでしたが」
「気のせいじゃないカナ?」
 この故意犯め。
「まあそれはそれとして、今回のテーマは『頑張った運動会の思い出』だが、みゆはどうだ? 何か頑張った記憶あるか?」
「みゆはねー、か弱い女の子なので運動会では活躍できないんだよ。弱々しいおにゃのこなので、倒れたりしがちだよ」
「兄が記憶を掘り返すと、障害物競走で障害物を障害と見なさず全てなぎ倒す勇姿が浮かぶのだが」
「……き、気のせいじゃないカナ?」(冷や汗たらり)
「あと、パン食い競争で他の選手のパンまで奪取したりとか」
「にゃ、にゃははー。勘違いだよ、お兄ちゃんの」(冷や汗たらたら)
「さらに、応援合戦で白組赤組を応援しなければならないのに兄だけを応援し、つまみだされたりとか」
「み、みゆのことはいーじゃん。お兄ちゃんの話しよ? ね? ね?」
 珍しく必死な妹の姿が見れたので、まあよしとしよう。
「兄は……そうだな。今も昔もインドア派なので、やはり活躍できなかったな」
「そなの? けっこー運動神経いいのに」
「運動神経と運動が好きかどうかは関係ないさな。あと、基本的に団体競技苦手だし」
「個人主義者め!」
 なんで怒られてるの?
「なわけで、特にこれといった記憶はないなあ。玉入れや綱引きは個人が頑張るものではないし、陸上競技にしても特別足が速いわけでもなかったから、6人くらいの競技で地味ーに4位5位だったりとか」
「……褒めるところが思いつかないよ」
「だから、うーん。友人らとだらだらだべってるような記憶しかないなあ」
「話が盛り上がらないよぉ。嘘でもぶゆーでんを!」
「嘘か、任せろ! 兄は運動会の時、突如襲来した宇宙人をばったばったと」
「すとっぷ! 嘘があんまりだよ!」
「嘘でもいいって言ったじゃん」
「もうちょっとりありてーを望むところだよ!」
「リアリティ、なあ……分かった。運動家の時、突如襲来したヤクザをばったばったと」
「そういうことじゃなくて! なんでいっつも襲来するの?」
「普通に参観に来たら、なぎ倒せないだろ」
「なぎ倒さないの! もっと普通にさ、運動会で活躍したーってしたらいいんじゃないの?」
「じゃあする。兄は昔、運動会で大活躍した。いや、あれほど活躍したことはないな」
「何の競技?」
「ライン引き」
「…………」
「あんなまっすぐに引いたことなんて、今までも、そしてこれからもないだろうな。一世一代のライン引きだった」
「それは競技じゃないよ、ただの下準備だよ、お兄ちゃん!」
「活躍したのに?」
「のに! もー、みゆにかっこいいとこ見せてよ!」
「任せろ!」
 すかさずかっこいいポーズを決める。
「タコがのた打ち回ってるようにしか見えないよ、お兄ちゃん!」
「馬鹿な、兄はイカがのた打ち回ってるようなポーズのつもりだったのだが……まだまだ青いな、俺も」
「超どうでもいいよ!」
 実は兄もそう思っている。
「まあそんなわけで、あまり頑張った記憶のない兄でした」
「残念だよ……しかし! それ以外で頑張ればいいことだと思う妹だよ!」
「めんどくさいと思う兄」
「お兄ちゃんッ!」
 叱られる兄。

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